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「久しぶりの連絡」が逆効果になるとき

しばらく来ていないお客様に連絡したら、かえって足が遠のいた。この現象には理由があります。接触は多いほど良いという前提が、どこで崩れるのかを整理します。


しばらく来ていないお客様がいる。

このままだと本当に来なくなってしまうから、連絡してみよう。そう思ってLINEを送る。

そして、そのまま来なくなる。

心当たりのある方は少なくないと思います。既読はつく。返信も来る。「また行くね」と言われる。でも来ない。そして次から既読も遅くなる。

連絡しない方がよかったのではないか。そんな気さえしてきます。

この現象には理由があります。

01

受け取った側には、こう見えている

送る側の意図は「気にかけている」です。ただ、受け取る側の体験はまったく別のものになり得ます。

3ヶ月ぶりに届いたメッセージを想像してみてください。

お久しぶりです!最近お店に来られていないので、寂しいです。またぜひ会いたいです!

悪意はどこにもありません。文面としても失礼ではない。

けれど受け取った側は、こう感じます。

  • 3ヶ月何もなかったのに、急にどうしたのか
  • これは自分に来たのか、全員に送っているのか
  • 「また来て」と言われている

特に3つ目が重い。 好意の表明のつもりが、受け取る側には要求として届きます。しかも自分について何も触れられていないので、誰にでも送れる文面だと分かってしまう。

分かった瞬間、これは連絡ではなく営業になります。

02

「接触は多いほどいい」という前提が崩れる場所

マーケティングの世界では、繰り返し接すると好意が増すという知見が知られています。心理学者ロバート・ザイアンスが提唱した単純接触効果です。何度も目にしたものに、人は親しみを感じやすくなる。

これ自体は、繰り返し確認されている頑健な現象です。

ただし、条件があります。

単純接触効果が働くのは、その刺激が受け手にとって中立か、それ以上である場合です。もともと不快に感じられているものを繰り返し見せると、好意は増えません。むしろ悪化することがあるとされています。

ここが分かれ目です。

「自分について何も知らないまま送られてくる営業メッセージ」は、多くの人にとって中立ではありません。中立でないものを繰り返せば、接触は積み上がるのではなく削られていきます。

連絡すればするほど遠ざかる、という現象が起きるのはこのためです。

03

では、何が違うのか

同じ「久しぶりの連絡」でも、こちらはどうでしょうか。

お久しぶりです!最近お見えにならないので寂しいです。またぜひ会いたいです
8月の昇進試験、いかがでしたか。ずっと気になっていました
暑い日が続きますね。お体に気をつけてください
前回開けた獺祭、同じものを入れておきました。次にお越しのときにでも

違いは一つだけです。その人にしか送れない内容かどうか。

前者は誰にでも送れます。後者は、その人の話を覚えていなければ書けません。

受け取る側は、そこを一瞬で見分けます。文章が上手いかどうかではありません。自分について具体的に触れられているかどうかだけです。

接触の回数が関係を作るのではありません。中身のある接触だけが積み上がります。
04

空っぽの文面しか書けない、本当の理由

ここで多くの店が、文面の書き方を教えようとします。テンプレート集を配ったり、「気の利いた一言を添えて」と指導したり。

けれど、これでは解決しません。

書けない理由は、文才ではなく材料がないことだからです。

3ヶ月前の会話を覚えていれば、誰でも書けます。「試験どうでしたか」は文章力を必要としません。覚えていないから、当たり障りのない言葉で埋めるしかない。

つまり、フォローの質は連絡する瞬間に決まるのではなく、3ヶ月前に何を記録したかで決まっています。

記録がなければ、どれだけ丁寧に文面を練っても中身は空のままです。

05

いつ送るか、より、何をきっかけに送るか

「どれくらい空いたら連絡すべきか」という質問をよく聞きます。1ヶ月か、2ヶ月か。

正直なところ、期間そのものにはあまり意味がありません。

大事なのは、送る理由がお客様の側にあるかどうかです。

  • 話していた試験や商談の結果
  • 開けたボトルの残り
  • 前回「次は連れてくる」と言っていた同僚
  • 話題に出た店や旅行の予定

これらは、期間ではなく出来事がきっかけになっています。 だから唐突に感じられません。

逆に「2ヶ月空いたから」という理由で送ると、送る側の都合が透けます。お客様の側には、そのタイミングで連絡を受ける理由がないからです。

なお、誕生日の連絡も同じ罠にかかります。日付は分かるので送りやすいのですが、その人に触れていない誕生日メッセージは、テンプレートとして見抜かれます。 これは別の記事で詳しく扱います。

06

送らない、という選択もある

最後に、正直な話を書きます。

材料が何もないなら、送らない方がいい場合があります。

空振りの連絡は、単に効果がないだけではありません。「この店は自分のことを覚えていない」と伝えてしまいます。それは、連絡しなかった場合よりも悪い状態です。

一度きりの来店で、名前と日付しか残っていない。この状態で送る言葉は、どうしても一般的なものになります。無理に送るより、次に来店されたときに何かを残す方が先です。

もちろん、まったく連絡しないのが正解でもありません。判断の基準はシンプルです。

  1. 1.その人だけに当てはまる事実を、1つ挙げられるか
  2. 2.その事実に、いま触れる理由があるか
  3. 3.返信を求めない形で書けるか

3つとも満たせるなら送る。1つ目が出てこないなら、送らずに記録を整える。それだけです。

まとめ

  • 久しぶりの連絡が逆効果になるのは、接触が「営業」として受け取られたとき
  • 単純接触効果は、中立以上の刺激でしか働かない。不快なものは繰り返すほど悪化し得る
  • 分かれ目は文章力ではなく、その人にしか送れない内容かどうか
  • 空っぽの文面しか書けないのは、材料が残っていないから
  • 送るきっかけは期間ではなく、お客様の側にある出来事
  • 材料がないときは、送らずに次の来店で記録を残す方が先

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