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風営法で義務なのは従業者名簿。では顧客名簿はどう扱うべきか

「風営法の名簿」と聞いて顧客名簿を思い浮かべる方は少なくありませんが、法が備付を義務付けているのは従業者名簿です。保存期間や電子保管の要件を整理したうえで、義務ではない顧客記録が2025年の改正以降どういう位置づけになったかを考えます。


「風営法で名簿の保存が義務付けられている」

この話は業界でよく聞きます。ただ、その「名簿」が何を指しているかは、意外と曖昧なまま語られています。

顧客名簿のことだと思っている方。従業者名簿のことだと知っている方。両方が義務だと思っている方。実際に話してみると、認識はかなりばらついています。

結論から書くと、風営法が備付を義務付けているのは従業者名簿です。 顧客名簿ではありません。

まずそこを整理したうえで、では顧客の記録はどう扱うべきなのかを考えます。

*以下は一般的な情報の整理であり、法的助言ではありません。個別の判断は行政書士・弁護士等の専門家にご確認ください。*

01

従業者名簿は、備え付けが義務

風営法施行規則106条では、風俗営業者などに対し、従業者が退職した日から起算して3年を経過する日まで、その者に係る従業者名簿を備えておかなければならないと定められています。

対象は風俗営業者に限りません。特定遊興飲食店営業者、深夜において酒類提供飲食店営業を営む者なども含まれます。つまりガールズバーやバーであっても、対象になり得ます。

実務上、押さえるべき点は3つです。

  1. 1.営業所ごとに備え付ける — 複数店舗を経営していても、本社で一括保管する形は認められていません。各店舗に置く必要があります
  2. 2.退職後3年間の保存 — 在籍中だけではありません。辞めた人の分も3年間残します
  3. 3.記載内容の確認書類を添付する — 記載しただけでは足りません

3つ目が見落とされがちです。住民票の写しなど、住所・氏名・生年月日・本籍等を確認できる書類でチェックし、確認した年月日を記載したうえで、その書類の写しを名簿に添付するという運用が求められます。

名簿を備え付けなかった場合や、記載内容に不備・虚偽があった場合は、罰金の対象になり得ます。

02

電子保管も認められている。ただし条件付き

紙で管理しなければならない、というルールではありません。施行規則107条により、電子データでの保管も認められています。

ただし条件があります。必要に応じて直ちに表示または印刷できる状態であることです。

ここは実務上、意外と危ういところです。

立入検査の場で、その場で画面に出せる
パスワードが分からず開けない、端末が起動しない

後者は、データが存在していても不備と見なされ得ます。「クラウドに入っているから大丈夫」は、開けなければ意味がありません。

電子で管理する場合でも、誰がすぐ開けるのかを決めておく必要があります。店長が不在のときに開けない状態は、実質的に備え付けていないのと変わりません。

03

では、顧客名簿は?

ここが本題です。

接待飲食営業において、顧客名簿の備付を風営法が一般的に義務付けている、という規定はありません。

つまり、顧客の連絡先や来店履歴を残すかどうかは、法的な義務ではなく店の判断です。残していなくても、それ自体で風営法違反になるわけではありません。

「法律で決まっているから」という理由で顧客名簿を作っている店があるとしたら、前提が少しずれていることになります。

ただし——ここからが重要です。2025年の法改正で、状況が変わりました。

04

2025年の改正が、記録の意味を変えた

2025年(令和7年)6月28日、改正風営法が施行されました。平成27年以来10年ぶりの改正で、きっかけはいわゆる悪質ホストクラブ問題です。

接待飲食営業に対して、新たに禁止された行為があります。

  • 料金に関する虚偽の説明
  • 客の恋愛感情等につけ込んだ飲食等の要求
  • 客が注文していない飲食等の提供
  • 注文や料金の支払等をさせる目的での威迫

無許可営業や名義貸しに対する罰則も強化されました。射程はホストクラブに限りません。 キャバクラ、ガールズバー、コンカフェなど、広い業態が対象です。

ここで考えてみてください。

これらの行為があったかどうかが問題になったとき、店は何をもって「していない」と示すのでしょうか。

05

記録は、店を守る側にも回る

「言った」「言っていない」の争いになったとき、記録がない店は不利になります。

たとえばこういう場面です。

  • 料金の説明をしたのに、していないと言われた
  • 客が注文していないボトルを入れたと主張された
  • 過去の来店時に何をどう伝えたかを問われた

このとき、来店ごとの記録が残っていれば、事実を示す材料になります。逆に何も残っていなければ、記憶と主張の応酬になります。

顧客記録は義務ではありません。しかし、義務ではないものが店を守ることがあります。

もちろん、記録があれば必ず主張が通るわけではありません。ただ、何もない状態よりは確実に強い。 そして記録は、後から作れません。

これは監視や証拠固めのために書け、という話ではありません。日々の接客の記録が、結果として店とキャストの両方を守る材料になる、という構造の話です。

06

顧客情報は、別の法律の管轄

もう一点、混同されやすい点があります。

顧客名簿は風営法の義務ではありませんが、個人情報保護法の対象にはなります。

顧客の氏名・連絡先を扱う以上、業種や規模を問わず同法の適用を受けます。第三者への提供には原則として本人の同意が必要とされ、利用目的の扱いにもルールがあります。

つまり顧客情報については、

  • 風営法:備付の義務はない
  • 個人情報保護法:扱い方にルールがある

という整理になります。「義務がないから何をしてもいい」ではありません。

この点は別の記事で詳しく扱っています。あわせて読んでいただくと、全体像がつかめると思います。

07

実務としての整理

最後に、店として何をしておくべきかをまとめます。

  1. 1.従業者名簿は営業所ごとに備え、退職後3年保存する — これは義務です。確認書類の添付まで含めて
  2. 2.電子保管なら、その場で開ける体制にしておく — 誰が開けられるかを決めておく
  3. 3.顧客記録は義務ではないが、残しておく実務的な理由がある — 2025年改正後は特に
  4. 4.顧客情報の扱い方は明文化する — 誰が見られるか、退職時にどうするか

1と2は法令遵守の話、3と4はリスク管理と運営の話です。混ぜて考えると、どちらも中途半端になります。

義務は義務として確実に満たす。そのうえで、義務ではないものをどう扱うかは、店の方針として決める。この切り分けが、結局いちばん揉めにくいと思います。

まとめ

  • 風営法が備付を義務付けているのは従業者名簿。営業所ごと、退職後3年保存
  • 記載だけでなく、確認書類の写しの添付まで必要とされる
  • 電子保管は可能だが、直ちに表示・印刷できる状態が条件
  • 顧客名簿の備付義務は風営法にはない
  • ただし2025年改正で接待飲食営業への規制が強化され、記録が店を守る材料になる場面が増えた
  • 顧客情報は風営法ではなく個人情報保護法の管轄。扱い方のルールがある

*本記事は一般的な情報の整理であり、法的助言ではありません。実際の対応にあたっては、行政書士・弁護士等の専門家にご相談ください。また法令は改正されることがあるため、最新の情報をご確認ください。*


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