POSと顧客管理(CRM)は何が違うのか
どちらも「顧客管理ができます」と書いてありますが、残るデータの中身はまったく違います。会計の道具と関係の道具、その役割の差と、導入の順序について整理します。
ナイトワーク向けのシステムを調べていると、どのサービスにも「顧客管理」と書いてあります。
POSレジにも書いてある。CRMにも書いてある。予約システムにも書いてある。
同じ言葉が使われているので、どれを入れても同じことができるように見えます。実際には、残るデータの中身がまったく違います。
この記事では、その違いと、導入の順序について整理します。
POSが答えている問い
POS(Point of Sale)は、会計の道具です。
答えている問いは「今日いくら売れたか」。
- 誰が何を注文したか
- 卓ごとの伝票と合計
- 現金・カードの内訳
- 日次・月次の売上
会計を正確にし、締め作業を早くし、数字を可視化する。ここに関してPOSは非常に強力です。手書き伝票とExcelで回している店が導入すると、閉店後の作業時間が目に見えて減ります。
多くのPOSには「顧客管理」機能もあります。顧客を登録し、来店回数や累計金額を紐づけられる。これも事実です。
CRMが答えている問い
CRM(顧客関係管理)が答えているのは、別の問いです。
「この人は、次にいつ来るのか」
- 前回いつ来たか
- どれくらいの周期で来るか
- 何を話したか
- 誰が担当していたか
- 次に何をすべきか
売上を集計するのではなく、関係が続いているかを見る道具です。
両者は競合していません。答えている問いが違うので、比べる対象ですらないというのが正確なところです。
POSの顧客データに、残らないもの
では具体的に何が違うのか。同じ顧客について、それぞれに何が残るかを並べてみます。
POSに残るもの
- 来店日
- 注文した商品
- 支払金額
- 累計利用額
CRMに残るもの
- 上記に加えて
- 獺祭がお好き。前回は純米大吟醸を開けた
- 8月に昇進試験があると仰っていた
- 娘さんが来年受験。私立を検討中
- 家族の話題には触れない方がよい
違いは一目瞭然です。POSに残るのは金額で、CRMに残るのは会話です。
そしてもう一度来店してもらうために効くのは、後者です。
「累計30万円ご利用の常連様」という情報だけでは、次の一言が出てきません。「試験、いかがでしたか」と切り出せるのは、会話が残っている場合だけです。
集計できる情報と、次の会話になる情報は、別のものです。
「顧客管理機能つきPOS」はどこまでやるのか
とはいえ、POSにも顧客管理機能はあります。どこまでできるのか。
多くの場合、こういう構造になっています。
これは手抜きではなく、設計思想の違いです。POSの顧客データは会計の副産物なので、会計に必要ない情報を持つ理由がありません。
そして自由記述欄が1つあっても、実際には使われません。理由は3つです。
- 1.入力の場面が会計時だから — 締めの忙しい時間に、会話の内容を思い出して書く余裕はありません
- 2.書くのが会計担当だから — 実際に話したのはキャストです。会計する人は会話の中身を知りません
- 3.読む導線がないから — 書いても次の接客前に見る画面がなければ、書く意味を感じられません
つまり、欄があるかどうかではなく、記録が生まれる場所と読まれる場所が設計されているかが違いです。
どちらを先に入れるべきか
正直に書きます。多くの店にとって、POSが先です。
会計が回っていない店に、顧客管理を入れても機能しません。
- 伝票の計算が合わない
- 締めに毎晩1時間かかっている
- 売上がいくらか月末まで分からない
この状態なら、まずPOSです。日々の運営が回っていないところに関係構築の道具を入れても、使う余裕がありません。
CRMが効いてくるのは、次の状態です。
- 会計は回っている
- それでも新規が定着しない
- 指名が特定のキャストに偏っている
- 誰かが辞めるたびに客足が落ちる
「売上を数える」段階を超えて、「売上を作る」段階に入ったときに必要になる道具、という整理が近いと思います。
両方入れると、二重入力にならないか
現実的な懸念です。実際、ここで導入を諦める店は少なくありません。
考え方は2つあります。
1. 入力する人が違うと理解する
POSに入力するのは会計担当。CRMに入力するのは、基本的には接客したキャストです。
もちろん、店側が代わりに記録することもあります。忙しい日にキャストの分をまとめて打つ、退店したキャストの分を引き継ぐ、といった場面です。ただその場合でも、POSの入力とCRMの入力は別の時間帯・別の目的で行われます。 会計の締め作業をしながら会話の内容を打つ、という形にはなりません。
2. 入力の量が違うと理解する
POSは注文のたびに打ちます。CRMは1来店につき1〜2行です。「獺祭。昇進試験の話」で終わりです。
とはいえ、操作が増えることは事実です。だからCRM側は、入力の手間をどこまで削れるかが生命線になります。1行で済むか、選択式ではなく自由に書けるか、来店前に自然に目に入るか。ここが機能していないCRMは、確実に使われなくなります。
将来的には両者が統合されていくべき領域だとも思いますが、現時点では別々の道具です。
選ぶときに聞くべきこと
比較検討の場面で、実際に効く質問を挙げます。
- 1.誰が入力する想定ですか — 会計担当かキャストかで、機能の設計が変わります
- 2.1回の入力に何秒かかりますか — 実際にデモで打ってもらうのが確実です
- 3.入力したものは、次にどこで読まれますか — 読む導線がなければ、記録は続きません
- 4.担当が辞めたら、その記録はどうなりますか — 個人アカウントに紐づいていると消えます
- 5.スマホで使えますか — 現場で使うのはPCではありません
3番と4番は、意外と答えが返ってこない質問です。逆に言えば、ここを設計しているサービスは信用できます。
まとめ
- POSは「今日いくら売れたか」、CRMは「次にいつ来るか」に答える道具
- POSに残るのは金額、CRMに残るのは会話
- POSの顧客管理機能は会計の副産物であり、設計思想が違う
- 会計が回っていない店は、まずPOSを入れるべき
- CRMが効くのは「売上を数える」から「売上を作る」に移る段階
- 選ぶときは、誰が入力し、どこで読まれ、辞めたらどうなるかを聞く
Neona は、CRM側の道具です。会計機能はありません。来店・接客・接点の記録を顧客ごとに蓄積し、担当が変わっても関係を引き継げるようにするための店舗運営 OS です。記録は1行から、来店前に自然に目に入る導線まで含めて設計しています。キャストの利用は無料です。